営業の仕事を続けてきて、このままでいいのかと考えたときに浮かぶのが、リスキリングでマーケティングを学び、マーケティング職へ転職するという選択肢ではないでしょうか。

結論からお伝えすると、営業経験はマーケティングへの転職でかなり武器になります。実際に僕自身も営業出身なのでお伝えしやすいです。

ただし、学んだことを並べるだけでは足りず、営業でやってきたことをマーケティングの仕事として説明できる状態をつくってから動くのが近道。

とはいえ、仕事を続けながら学ぶ時間は限られますよね。

転職先の求人票を見てみると、「経験2年以上」のような条件が並んでいて、マーケティング未経験の自分は何を準備すれば応募できるのか、決めきれずに止まってしまう方も多いかと思います。

この記事では、トッパン・フォームズ(現TOPPAN)で12年間営業をしたあと独立し、いまはWEBプランナー養成講座を運営している僕、田原が、営業経験をマーケティングの仕事につなげる考え方、転職を含めた3つの道の比べ方、リスキリングから転職までの進め方、使える公的制度の違いを順にお伝えします。

それでは、一緒に見ていきましょう。

営業経験は、マーケティングのどこで活きる?

お客さんの課題を聞き、提案を組み立ててきた営業の経験は、マーケティングで「誰に、何を、どう伝えるか」を決める場面でそのまま活きます。

マーケティングは、商品が売れるまでの流れを設計する仕事で、その出発点はお客さんを知ることだからです。

お客さんの声を知っていることが、企画の出発点になる

広告の文面やLP(商品の申し込みページ)の見出しを考えるとき、お客さんが実際にどんな言葉で悩みを話すかを知っている人は、それだけで書けるものが変わります。営業で断られた理由や、契約の決め手になった一言を覚えているなら、その材料をすでに持っていることになります。

僕が営業の仕事で身につけたのは、お客さんの仕事の前後にどんな活動があるかを考えることでした。断られた理由を振り返ると、こちらだけが良いと思っていた提案が、相手の期待とずれていたことがあります。

僕は印刷会社でしたが、お客さんが求めていたものは、ペーパーレス化を進めるためのデジタルの仕組み。それなのに、自社工場を動かさないと利益を生み出せないので、紙の提案に着地させていることに、ほんと違和感を感じていました。でも、自社で売れるものを売らないといけないじゃないですか。

だから、まず大事な事。それは、自分が売りたいものを売るのではなく、相手が何を求めているかからスタートするべきなので、提案する側の思い込みを外して聞かないと、お客さんが本当に求めているものが見えてこないんですよね。

マーケティングの現場では、データを見て施策を決めることが多くあります。ただ、数字から分かるのは「どこで離れたか」までで、「なぜ離れたか」は、お客さんのリアルな声を聞かないと分かりません。営業で毎日お客さんと話してきた経験は、この「なぜ」を考える力になります。

営業だけでは足りないのは「仕組み」と「数字」

営業経験だけでマーケティングの仕事ができるわけではありません。足りなくなりやすいのは、1対1の提案を、多くの人に届く仕組みにする設計と、結果を数字で振り返る習慣の2つです。

営業なら、相手の表情を見ながら話す順番を変えられます。広告やLPでは、それができません。だから、誰に向けたものかを先に決め、出したあとの反応をクリック率や申込率(CVR)といった数字で確かめて、言葉や順番を直していきます。

最初は専門用語の多さに戸惑うかもしれません。用語を全部覚える必要はなく、「どの数字を見て、何を直したか」を自分の言葉で説明できれば、最初の段階としては十分です。

リスキリングで転職する前に、3つの道を比べる

マーケティングを仕事にする道は、転職だけではありません。転職、今の会社でマーケティングを担う、副業や独立の3つを比べてから決めると、学ぶ中身も使う制度も選びやすくなります。

営業経験を起点に、転職、社内でマーケティングを担う、副業や独立の3つの道が分かれ、収入と試す場の違いが並ぶ図

転職・社内異動・副業や独立で変わること

3つの道は、収入の安定と、学んだことを試せる場の大きさが違います。どれが正解というものではなく、今の仕事や家庭の状況によって合う道が変わります。

項目 転職 今の会社で担う 副業・独立
収入 会社員としての給与が続く 今の給与が続く 成果しだいで上下する
学んだことを試す場 入社後の担当業務 自社の商品や販促 自分や顧客の商品
動き出す前に必要なもの 応募先の要件に合う経験 社内での提案と合意 最初のお客さん
向いている人 マーケティングを専門の仕事にしたい人 今の会社や商品に愛着がある人 働く時間や場所を自分で決めたい人

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このうち、今の会社でマーケティングを担う道は見落とされがちです。

営業部門にいながら販促の企画を引き受けたり、問い合わせを増やす施策を提案したりすれば、転職しなくても実務経験を積めます。その経験は、あとで転職するときにもそのまま使えます。

ここ最近では、離職者を減らしたい企業が多いため、企画部などへの移動願いも出しやすくなっている風潮が見受けられます。伝え方次第ですから、ちゃんと相手に伝わると前向きにも捉えられるので、希望をまず伝えておく、というのは有効な手段です。

営業から独立した僕の場合

僕自身は、転職ではなく独立を選びました。2006年にトッパン・フォームズに入社し、12年間営業をしたあと、2018年に35歳で独立しています。独立後は、平均250万円を超える金額で20社以上から仕事をいただきました。

実は、社会人3年目に転職を考え、転職活動をしたこともあります。それでも転職しなかったのは、周りに転職を始める人が多かったことに引っ張られている面があったのと、環境が変わっても自分が変わっていなければ意味がないと思ったからです。

WEBプランナー養成講座の受講生にも、学んだあとに転職した人もいれば、独立した人もいます。どの道が合うかは人によって違います。道を選ぶ前に、環境を変えることで自分の何を変えたいのかを決めておくと、選んだあとに迷いにくくなります。

そのうえで、安定した給与を保ちながらマーケティングを専門にしたいなら、転職が現実的な道です。ここから先は、転職を選んだ場合の準備をお伝えします。

未経験の採用で見られるのは何か

未経験の採用で見られるのは、何を学んだかより、学んだことで何をやったかです。講座の修了証だけでは、入社後に仕事を任せられるかどうかを採用側が判断しにくいからです。

講座を修了しただけでは、評価が分かれる

転職前にリスキリングをした20〜50代の100人に聞いた調査では、41%が「面接や書類選考で有利に働いた」と答えた一方で、25%は「関連性が薄く、あまり役立たなかった」と答えています(J-CASTニュース:転職前のリスキリングで年収アップを実現(学研スキルアップ研究所の調査))。

同じ記事で、採用担当者は、入りたい会社の求人に書かれている要件から、必要なリスキリングを逆算するよう勧めています。学んだかどうかより、応募先が求めることに合わせて学び、試したかどうかで評価が分かれます。

営業でやってきたことを、マーケティングの言葉で書き直す

営業経験は、マーケティングの工程に置き換えて伝えると、評価される材料になります。同じ経験でも、「営業をしていました」と書くのと、マーケティングの仕事の一部として書くのとでは、採用側の受け取り方が変わります。

営業でやってきたこと マーケティングの仕事としての言い方
お客さんへのヒアリング 顧客理解、ターゲットの悩みの整理
提案書づくり 訴求(何を一番に伝えるか)の設計
見込み客のリスト管理 見込み客(リード)の管理と育成
失注した理由の振り返り 数字と声をもとにした改善
既存のお客さんへのフォロー リピートや紹介を生む施策

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書き直すときは、言葉だけを変えて中身が伴わない状態にならないよう気をつけてください。面接では「具体的に何をしたのか」を必ず聞かれます。表の右側の言葉で話せるのは、実際にその工程を考えてやったことだけです。

リスキリングは何から始める?転職までの3ステップ

リスキリングは、学ぶ講座を選ぶところからではなく、応募したい求人を集めるところから始めます。求人の要件から学ぶ範囲を決め、小さな実務の結果を1つつくり、営業の実績を書き直してから応募する。この3ステップで進めると、学ぶ時間を無駄にしにくくなります。

求人の要件の書き出しから、小さな実務づくり、職務経歴書の書き直しを経て応募に至る3段階の流れ

ステップ1:応募したい求人から、学ぶ範囲を決める

まず、応募してみたい求人をいくつか集め、必須の条件と歓迎される条件を書き出します。広告運用、SEO、SNS、メールマーケティングなど、マーケティングと一口に言っても求められるものは求人ごとに違います。

書き出してみると、自分にすでにあるものと足りないものが分かれて見えてきます。最初から全部を学ぼうとすると、仕事と両立できずに止まりやすくなります。足りないものの中から、複数の求人で共通しているものを1つか2つ選べば十分です。

ステップ2:学びながら、小さな実務を1つつくる

学ぶのと並行して、面接で話せる「やったこと」を1つつくります。今の会社の販促を手伝う、知人のお店のSNS運用を引き受ける、講座の課題で実際の商品を扱うなど、規模は小さくて構いません。

問われるのは成果の大きさではなく、「何を狙って、何をして、数字がどう動いたか」を説明できるかどうかです。うまくいかなかった結果でも、なぜそうなったと考え、次に何を変えるかまで話せれば、仕事の進め方を伝える材料になります。

ステップ3:職務経歴書と面接の話を組み直す

最後に、営業の実績を、マーケティングの工程と数字で書き直します。「売上目標を達成した」だけで終わらせず、どんなお客さんに、何を、どんな順番で提案して成果が出たのかを書きます。

職務経歴書を書き直すときの3つの問い

  • 誰に向けた提案だったか(業種、規模、悩み)
  • 何を一番に伝えたか、それはなぜか
  • 結果を数字で示すと、どう変わったか

この3つに答えられる経験があると、マーケティングの仕事を任せたときの姿を、採用側が想像しやすくなります。ステップ2でつくった実務の話と、営業時代の話が同じ考え方でつながっていれば、さらに伝わりやすくなります。

転職で使える2つの公的制度の違い

転職を目指して学ぶときに使える個人向けの公的制度は、主に2つです。転職の支援まで一緒に受けたいなら経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」、講座も転職先も自分で選びたいなら厚生労働省の「教育訓練給付金」が候補になります。

項目 キャリアアップ支援事業(経済産業省) 教育訓練給付金・専門実践(厚生労働省)
対象になる人 在職中で、雇用主が変わる転職を目指す人 雇用保険の加入期間などの要件を満たす人
受けられる支援 キャリア相談、講座、転職支援がセット 指定された講座の受講費用の給付
戻ってくる額 修了で受講費用(税別)の1/2(上限40万円)、転職して1年続けて働くと追加で1/5(上限16万円) 受講費用の50%(年間上限40万円)、修了後1年以内に雇用されると70%(同56万円)、賃金が5%以上上がると80%(同64万円)
転職先の探し方 事業の中で紹介を受けた会社などへの転職 自分で探す(当社は転職支援も有り)

※↔スワイプして表を見る

講座修了時に受講費用の半分、転職後1年の就業でさらに5分の1が補助される2段階の仕組み

転職支援まで受けるなら、キャリアアップ支援事業

経済産業省のキャリアアップ支援事業は、在職中に雇用主が変わる転職を目指す人のための制度で、キャリア相談、講座の受講、転職の支援をまとめて受けられます。補助は2段階で、講座を修了すると受講費用(税別)の2分の1(上限40万円)、転職して1年続けて働くと、さらに5分の1(上限16万円)が加わり、合計で最大56万円です(リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業:転職をご検討の方)。

同じページでは、この事業で転職した人の6割以上が、転職前より給与が上がったと紹介されています。気をつけたいのは、ここでいう転職が、事業の中で紹介を受けた会社などへの転職に限られる点です。受講料や負担が軽くなる額は事業者ごとに違うため、申し込む前に確認しておきましょう。

起業・独立・業務委託へのシフトを考えているなら、教育訓練給付金

厚生労働省の教育訓練給付金は、国が指定した講座を受けると、受講費用の一部が戻ってくる制度です。いちばん手厚い専門実践教育訓練では、受講中に費用の50%(年間上限40万円)が支給され、資格の取得などをして修了後1年以内に雇用保険に入る形で雇用されると70%(年間上限56万円)、さらに賃金が受講前より5%以上上がると80%(年間上限64万円)になります(厚生労働省:教育訓練給付制度)。

転職先を自分で選べるのが、この制度の特徴です。ただし、対象になるのは指定された講座だけで、雇用保険の加入期間などの要件もあります。受講を始める前に、講座が対象かどうかと、自分が要件を満たすかをハローワークで確かめておくと安心です。

学び先を選ぶときに確かめたい3つの点

転職を目指して学び先を選ぶなら、実務で成果を出している人から実務に近い課題で学べるか、転職の相談をどこまで受けられるか、修了したあとも相談できる相手が残るかの3点を確かめてください。

僕も2013年から2015年にかけて、教材やコミュニティ、塾をいくつも渡り歩きました。振り返ると、当時の僕は、実際に成果を出している人から学んでいませんでした。そのため、ノウハウの背景にある考え方まで汲み取れず、教わったことを自分の仕事に当てはめられなかったんです。

この経験から、1つ目には教える人の実務の成果と、課題の中身の両方を入れています。教材を見て終わる講座だと、ステップ2の「やったこと」をつくる場が無く、面接で話せる材料が残りません。2つ目の転職の相談は、職務経歴書の書き直しや求人の紹介まで含むのか、キャリア相談だけなのかで、自分で動く量が変わります。3つ目は見落とされやすい点で、転職したあとに仕事で迷ったとき、相談できる講師や仲間がいるかどうかで、その後の伸び方が変わります。

ちなみに、僕たちYOUSEEDの「WEBプランナー養成講座」「AI×WEBマーケティング実践講座」は、2025年10月に経済産業省のリスキル講座(第四次産業革命スキル習得講座)に認定され、教育訓練給付金の対象になっています。給付金を使える講座を探している方は、選ぶときの候補の1つにしてみてください。

よくある質問

40代でもリスキリングでマーケティング職に転職できますか?

営業などの経験をマーケティングの仕事として説明できるなら、40代でも転職の道はあります。年齢が上がるほど、学んだことより「これまで何をしてきたか」が見られるため、営業の実績を書き直すステップ3に時間をかける価値があります。転職だけでなく、今の会社でマーケティングを担う道もあわせて考えておくと、選択肢が広がります。

リスキリングをしても転職できないのはなぜですか?

よくあるのは、学んだ内容と、応募先の求人が求める内容がずれているケースです。講座を修了しても、面接で話せる「やったこと」が無いと、仕事を任せられるかを採用側が判断できません。求人の要件から学ぶ範囲を決め、小さくても実務の結果を1つつくってから応募してみてください。

キャリアアップ支援事業で学んだあと、転職しなかったらどうなりますか?

転職して1年続けて働いたときの追加の補助(受講費用の5分の1、上限16万円)は受けられません。講座を修了した時点の補助(受講費用の2分の1)の扱いや、事業者ごとの条件は異なるため、申し込む前に事業者へ確認してください。転職するか迷っている段階なら、転職を前提としない教育訓練給付金の対象講座も比べてみると安心です。

AI時代にマーケティング職へ転職しても大丈夫ですか?

誰に、何を、どう届けるかを決める役割を担えるなら、AIが広がってもマーケティングの仕事は残ると僕は考えています。文章や画像をつくる作業はAIで速くなりましたが、どのお客さんに向けて何を伝えるかを決めるのは人の仕事です。僕自身、2025年にはAI時代の学びの価値に悩み、そこからAI活用に本格的に取り組んできました。

転職を目指すなら、独学とスクールのどちらがいいですか?

実務の機会を自分でつくれるなら、独学でも進められます。基礎の知識は本や動画でも学べるからです。ただ、仕事を続けながら一人で課題を見つけて試し、結果を振り返るには手間がかかります。実務に近い課題や転職の相談まで受けたい方は、スクールや講座を使うほうが早く進みやすいでしょう。

まとめ

営業経験は、マーケティングへの転職で武器になります。そのためには、転職を含めた3つの道を比べ、応募したい求人から学ぶ範囲を決め、営業の実績をマーケティングの言葉で説明できる状態をつくってから動くことが近道です。

営業からマーケティング職へ進むための要点

  • 営業で聞いてきたお客さんの声は、マーケティングの企画の出発点になる
  • 足りないのは、多くの人に届く仕組みの設計と、数字で振り返る習慣
  • 転職、今の会社で担う、副業や独立の3つを比べてから決める
  • 求人の要件から逆算して学び、面接で話せる「やったこと」を1つつくる
  • 転職支援まで受けるならキャリアアップ支援事業、自分で探すなら教育訓練給付金

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