マーケティングはAIにどこまで任せられるのか。結論から言うと、アイデア出しや文章づくり、集計といった作業の多くは、AIに任せられます。一方で、誰に何をなぜ届けるかを決めること、お客さんのリアルな声と実体験を集めること、どこでどう喜んでもらうかを考えることは、人の仕事として残ります。

とはいえ、自分の仕事のどこまでをAIに渡していいのかは、すぐには決められないですよね。「全部AIでできるなら、これまで学んできたことは無駄になるのでは…」と感じている方もいると思います。僕も2025年、AIの進化を前にして、これまで教えてきたことの価値がどうなるのかを本気で考えた時期がありました。

そこでこの記事では、WEBマーケティングの工程ごとにAIとの分担を整理し、任せていい作業と、人が考えるべき3つの仕事を順に解説します。会社員時代に12年間営業を続け、独立後は20社以上の案件を受注してきた現場の感覚と、公的な調査をもとにお伝えします。

それでは、順に見ていきましょう。

AIにどこまで任せられる?作業は任せて、判断は手元に残す

AIに任せられるのは、判断の材料をつくる作業までです。どれを使うか、世に出すかどうかを決める判断は、自分の手元に残します。

実際、企業の現場では、AIはすでに作業の担い手になっています。総務省の『令和8年版 情報通信白書』によると、日本で何らかの業務に生成AIを利用している企業は86.4%(活用方針を「わからない」と答えた企業を除く)。業務の種類では「議事録・メール作成補助」が約7割と最も多く、文章をつくる・まとめる作業から任されていることが分かります(総務省「生成AIの業務利用状況」)。

個人の受け止め方も同じ方向です。同じ白書の個人向け調査では、仕事でAIが担う役割として最も同意が多かったのが「単純・非効率な仕事を生成AIに任せる」でした。「自分の仕事がAIに代替され、職を失う」への同意は、比較的低い結果です(総務省「仕事においてAIが今後担いうる役割等」)。

任せられるのは「案を出す・形にする・まとめる」

AIに任せやすいのは、材料を出して形にする作業です。アイデアの案を出す、本文の文章を書く、ページのコードをつくる、数字を集計してレポートにする。どれも手を動かす時間はかかるのに、やり方はある程度決まっている作業なんですよね。

こうした作業は、AIの出したものに間違いがあっても、出す前に人が直せます。任せやすい理由はそこにあります。

人に残るのは「決める・聞く・喜ばせ方を考える」

反対に人に残るのは、結果に責任を持つ仕事と、お客さんと向き合う仕事です。誰に向けて何を売るかを決め、AIの出したものを出していいか確かめる。お客さんの話を聞き、どこで喜んでもらうかを考える。

AIは案をいくつでも出してくれますが、どれを選んでも、その結果を引き受けるのはあなた自身です。この線引きを先に持っておくと、任せる範囲で迷いにくくなります。

AIとの分担を決めるときの基準

  • 間違っていても、出す前に直せる作業はAIに任せる
  • 何を選ぶか、出すかどうかの判断は自分が持つ
  • お客さんの声を聞くことと、喜んでもらう工夫は人が担う
案出しや文章づくりをAIに、決定やお客さんの声を聞く仕事を人に振り分けた分担図

WEBマーケティングの工程別に見る、任せる・一緒にやる・自分で持つ

工程ごとに分けてみると、AIに丸ごと任せられる工程はほとんどありません。多くの工程は「AIと一緒にやる」に入り、最後の決定だけが自分に残ります。

工程 AIに任せる AIと一緒にやる 自分で持つ
お客さん・市場の調査 悩みのリサーチ、情報の要約 調べる観点の洗い出し お客さんのリアルな声を聞く
商品・コンセプト アイデア出し 自分の経験やお客さんの状況とのすり合わせ 誰に、何を、なぜ届けるかの決定
発信(ブログ・SNS・メルマガ) 本文の細かい文章 構成案づくり キャッチコピーと見出しの判断、実体験を入れる
LP デザイン案、HTMLのコーディング 構成と訴求の比較 約束してよい表現かの判断
メルマガ・LINEの配信 配信の設定 配信の流れの組み立て 何を、どの順番で届けるか
分析・改善 クリック数などの集計、改善レポート 改善案の洗い出し 何を変えるかの決定
相談・販売 日程調整、定型の返信 提案書のたたき台 相談の場での対話と、喜んでもらう工夫

※↔スワイプして表を見る

表の左の列から任せ始めると、うまくいかなくても取り返しがききます。あなたの場合、いまいちばん時間を取られている工程はどこでしょうか?

右の列は、AIを使いこなすほど大事になる部分です。ここを空けたまま左と真ん中だけを進めると、発信の量は増えても、誰に向けた発信なのかがぼやけていきます。

AIに任せていい5つの作業

僕がAIに任せていいと考えているのは、アイデア出し、本文の細かい文章、LPのデザインとコーディング、配信の設定、配信後の分析とレポートの5つです。共通しているのは、AIの出したものを、最後に自分で確かめて調整できることです。

コンセプトやキャッチコピーの案を出す

コンセプトのアイデアや、キャッチコピー、メールの件名の案を出す作業は、AIがとても得意です。自分ひとりだと3案ほどで止まりがちなところを、10案、20案とすぐにそろえてくれます。

ただ、どの案にするかは、自分の経験やお客さんの状況とすり合わせて決めます。案の数が増えるほど選ぶ基準が必要になり、その基準をつくるのが、次の章で書く「人が考えるべき仕事」です。

本文の細かい文章を書く

ブログやメルマガ、LPの本文の細かい文章は、AIに任せていい部分です。キャッチコピーや見出しは最終的に自分で判断しますが、その下に続く説明文は、AIに書いてもらってから調整すれば十分です。

最初からそのまま出せる文章を求めると、手直しの多さに疲れてしまいます。たたき台が出てくれば合格、くらいに考えておくと続けやすいですよ。

LPのデザインとHTMLのコーディング

LPのデザイン案や、ページをつくるHTMLのコードを書く作業も、AIに任せられます。ひとりで事業をしていると後回しになりやすい作業ですが、AIを使えば形にするまでの時間を短くできます。

できあがったページは、パソコンだけでなくスマートフォンでも開いて、表示の崩れやリンクの間違いがないかを確かめてから公開してください。

メルマガやLINEの配信の設定

メルマガやLINEの配信の設定も、AIに任せていい作業です。配信の流れの組み立てや、設定の手順を確かめる作業をAIと進めると、ひとりでも仕組みを整えやすくなります。

一方で、何を、どの順番で届けるかは、設定に入る前に自分で決めておきます。ここが決まっていないと、仕組みだけが整って中身が追いつかない状態になります。

配信後の分析と改善レポート

配信したあと、どのくらいクリックされたのか、どこで読まれなくなったのかを集計し、どう改善すればいいかをレポートにまとめる作業もAIに任せられます。毎月の振り返りにかかる時間が、ぐっと短くなります。

レポートを読んで、どれを変えるかを決めるのは自分です。AIには「何が起きたか」と「どんな手が打てるか」の整理までを任せます。

人が考えるべき3つの仕事💡

人が考えるべき仕事は、誰に何をなぜ届けるかを決めること、お客さんのリアルな声と実体験を集めること、どこでどう喜んでもらうかを考えることの3つです。AIを使えばできる場面でも、僕はこの3つを自分でやるようにしています。

①誰に、何を、なぜ届けるかを決める

1つ目は、マーケティングの出発点を決める仕事です。マーケティングは、誰が、誰に、何を、なぜ、どうやって届けるかを決める考え方。このうち「どうやって」の部分は、AIがかなり手伝ってくれるようになりました。

一方で、「なぜ、あなたがそれを届けるのか」は、AIには決められません。AIに聞けばもっともらしい理由は返ってきますが、それはあなたの経験や思いから出てきた理由ではないからです。WEBプランナー養成講座で、届け方のテクニックより先にこの「なぜ」に時間をかけているのも、そのためです。

ここで決めた「なぜ」は、AIの出したものを出していいか判断するときの基準にもなります。僕がAIの文章を見るときの基準も、「お客さんが何を求めているか」。基準がないと、どの案も良く見えて、結局決められなくなるんですよね。

②お客さんのリアルな声と、実体験を集める

2つ目は、AIが知らない情報を集める仕事です。お客さんの悩みのリサーチ自体は、AIでもできます。それでも僕は、実際にお客さんのリアルな声を聞くことを必ずやっています。話の中でポロッと出た一言が、いちばん刺さる言葉になるからです。

会社員時代、僕は12年間営業をして全国トップ5の成績を残せましたが、提案が通るかどうかは、提案内容の良し悪しで決まるわけではありませんでした。お客さんの話をどれだけ聞けたか。本当に悩んでいること、ボトルネックになっていること、本当に望んでいることを理解していることが、まず第一条件です。お客さんが口にする「こうしたい」「ああしたい」の背景に何があるのかを、理解しようと努めること。これはAIに任せられません。

もう一つ、AIに入っていない情報が、あなた自身やお客さんの実体験です。お客さんの経験を引き出して、発信や商品の中に入れていく。誰かの事業をプロデュースする立場でも、ここは人が担う部分です。

③どこでどう喜んでもらうかを考える

3つ目は、お客さんに喜んでもらうための工夫を考える仕事です。どのタイミングで、何をすれば驚いて喜んでもらえるか。こうしたサプライズのアイデアは、人が考えるべき部分だと僕は考えています。

考えていて楽しい部分でもありますし、ライバルとの差が出るのもここです。AIで作業が速くなるほど、似たような発信や商品は増えやすくなります。そのとき選ばれる理由になるのは、お客さんのことを考え抜いた工夫です。

届ける理由を決める、お客さんの声と実体験を集める、喜んでもらう場面を考える、の3つを並べた図

AIに任せる前に確かめたい3つの注意点

AIに作業を任せるときは、お客さんの情報の扱い、事実の確認、量産のしすぎの3点に気をつけます。どれも、公開してしまうと取り返しがつきにくいことです。

お客さんの個人情報を入れる前に、使い方を確かめる

お客さんの名前や相談内容をAIに入力する前に、その使い方で問題ないかを確かめます。個人情報保護委員会は、事業者が生成AIに個人情報を含む指示を入力する場合、その個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています(個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」)。

入力した内容をサービス側が学習に使うかどうかも、サービスによって違います。迷うときは、名前や連絡先を伏せてから入力することをお勧めします。

事実・数字・固有名詞は、出す前に自分で確かめる

AIの文章には、もっともらしい誤りが混ざることがあります。Googleも、生成AIでコンテンツをつくるときは正確性・品質・関連性を優先し、公開前に事実を確認するよう求めています(Google検索セントラル「ウェブサイトで生成AIのコンテンツを使う際のGoogle検索のガイダンス」)。

とくに料金、日付、制度の条件、人や会社の名前は、元の情報を開いて確かめてから出します。

記事を量産するより、自分の体験を足す

AIを使えば記事の本数は増やせますが、増やすほど成果が上がるわけではありません。同じGoogleのガイダンスでは、ユーザーにとっての価値を付加することなく大量のページを生成すると、スパムに関するポリシーに違反するおそれがあるとしています。

AIの下書きに、あなたが実際に経験したことや、お客さんから聞いた声を足す。そのひと手間が、AIだけで書いた記事との差になります。

結局、任せるほど「判断する力」の差が出る

AIに任せる範囲が広がるほど、出てきたものを選ぶ力の差が、そのまま成果の差になります。だからこそ、AIの時代にマーケティングを学んでおく価値は上がる、と僕は考えています。

僕自身、AIの出したものをそのまま使って、うまくいかなかった経験はめちゃくちゃあります。読むと頭では納得するのに、心が動かない。良さそうな文章だなとは思えても、読んだ人の行動にはつながらなかったんです。そこに欠けていたのが、実体験でした。

AIへの頼り方については、気になる研究もあります。『令和8年版 情報通信白書』で紹介されたMIT Media Labなどの研究では、小論文を書く実験で、最初からAI(大規模言語モデル)を使ったグループは、書いた直後に自分の文章を正確に引用する力が比較的低く、「自分の成果だ」という感覚も最も低かったとされています。一方、先に自分の頭だけで書いてからAIを使ったグループは、記憶をより良く思い出せたといいます(総務省「AIに頼ることがネガティブな影響をもたらすと指摘する研究例」)。

マーケティングの仕事に置き換えると、先に自分で「誰に、何を、なぜ」を考え、実体験を用意してから、AIに作業を渡す順番です。これまで学んできたことは、AIに出す指示の中身と、出てきたものを判断する基準として、そのまま使えます。学びが無駄になるのではなく、使いどころが変わるんですよね。

ひとりで事業をする人が、AIに任せ始める順番

AIに任せ始めるときは、伝え方の基本を押さえたうえで、作業を書き出して分け、1つだけ任せてみる順番で進めます。いきなり全部を任せる必要はありません。

講座やご相談でAIの使い方をお伝えするときも、最初に扱うのはメッセージの書き方です。自分を主語にして伝えるIメッセージと、相手を主語にするYouメッセージの違い。そして、「伝える」と「伝わる」は違うということ。こうしたライティングのコツを先に押さえておくと、AIへの指示にも入れられますし、AIの文章のどこを直せばいいかも分かるようになります。

そのうえで、次の4つの順で任せる作業を決めていきます。

  1. 1週間の作業を書き出す:発信、LPづくり、配信の設定、振り返りなど、時間を使った作業を並べる
  2. 「作業」と「判断」に分ける:最後に調整できるものは作業、選ぶ・決めるものは判断に入れる
  3. 作業の1つだけをAIに任せる:いちばん時間がかかっている作業から試す
  4. 浮いた時間を、お客さんとの対話に回す:相談、アンケート、感想を聞く時間に使う
1週間の作業を書き出し、作業と判断に分け、1つをAIに任せ、空いた時間をお客さんとの対話に回す流れ

一度にいくつもの作業を任せると、AIの出したものを確かめる手間が増えて、かえって時間がかかりがちです。まずは1つの作業で、確認の時間を含めても楽になったと感じられれば合格。そこから少しずつ広げていくことをお勧めします。

4つ目の「浮いた時間の使い道」まで、先に決めておいてください。使い道を決めていないと、空いた時間は別の作業で埋まってしまいます。

よくある質問

マーケティングの仕事はAIでなくなる?

作業の一部はAIに置き換わっていきますが、誰に何を届けるかを決める仕事はなくならないと僕は考えています。AIが出せるのは案までで、どれを選び、その結果を引き受けるかは人が決めるからです。作業だけを担っている状態から、判断も担える状態へ移っておくことをお勧めします。

無料のAIでもマーケティングに使える?

はい、アイデア出しや文章のたたき台なら、無料で使える範囲でも試せます。ただし、サービスによって使える回数や機能に制限があり、入力した内容の扱いも違います。お客さんの情報を入れる前に、利用規約を確かめてください。

AIで書いた記事はSEOで評価される?

AIを使ったかどうかではなく、内容で評価されます。Googleは、生成AIを使う場合も正確性・品質・関連性を優先するよう求めています。AIの下書きに事実確認と自分の体験を足してから公開すれば、AIを使ったこと自体が不利になるわけではありません。

お客さんの情報をAIに入れても大丈夫?

入れる前に確認が必要です。その情報を集めたときの利用目的の範囲内か、サービスが入力内容を学習に使うかを確かめます。判断に迷うときは、名前や連絡先などを伏せてから入力してください。

AIに書かせた文章が、自分らしくならないのはなぜ?

AIが、あなたの体験や考え方を知らないからです。AIは渡された情報をもとに文章をつくるので、情報が少ないと、誰が書いても同じような文章になります。自分の体験やお客さんから聞いた言葉を先に渡し、最後に自分の言葉で直すと、あなたらしい文章に近づきます。

まとめ

マーケティングは、アイデア出しや文章づくり、集計といった作業の多くをAIに任せられます。ただし、誰に何をなぜ届けるかを決めること、お客さんのリアルな声と実体験を集めること、どこでどう喜んでもらうかを考えることは、人が考える仕事として残ります。

AIに任せる仕事と、人が考える仕事

  • AIに任せるのは、アイデア出し・本文の文章・LPの制作・配信の設定・分析レポートなど、最後に調整できる作業
  • 人が考えるのは「誰に何をなぜ届けるか」「お客さんの声と実体験」「どこでどう喜んでもらうか」の3つ
  • お客さんの情報、事実と数字、量産のしすぎの3点に気をつける
  • AIの文章に実体験を足さないと、頭で納得されても心は動かない
  • 任せ始めるのは1つの作業から。浮いた時間はお客さんとの対話に回す

AIに任せる範囲が広がるほど、判断できる人の価値は上がっていきます。作業はAIと分け合って、あなたにしかできない仕事に時間を使っていきましょう。

AIに任せる作業と自分が持つ判断を、実際の仕事の中でどう分けていくか。その続きを、解説動画と資料にまとめています。自分の分担を決める材料として、解説動画&資料を受け取るからお受け取りください。